津波対策における「津波バリアー」の位置付け
- 海溝型地震の頻発する日本の沿岸域では、常に津波の襲来を想定した防災対策が求められます。津波による被害は、主に水塊による衝撃・流出、漂流物の衝突などにより引き起こされます。過去の津波による被災経験を踏まえて、沿岸域では浸水を防止・軽減させるための津波防波堤、防潮堤、水門などの建設、漂流物を食い止めるためのグリーンベルト(樹林帯)の整備といったハード対策と併せて、ハザードマップ作成、津波警報の周知対策、避難所・避難ルートの設定、避難訓練などのソフト対策を両輪とする複合的な津波防災対策が進められてきました。
- これらの対策は、地域毎に想定される津波規模に応じて適切に組み合わせていくことが大切ですが、一般には防護レベルを上げると対策費用が増大するため、設定する防護レベルに応じた多様な対策メニューが望まれています。
- 当研究会が提案する「津波バリアー(漂流物防護柵)」は、右図に示すように波高3m程度までの津波に対して、港湾にある小型船舶やコンテナ、車、木材などが漂流物となり後背地の津波被害が拡大することを防ぐと同時に、漁船や港湾に積み置かれた資産を流失から守ることを目的とする減災技術です。津波による海水の流入は止められませんが、防潮堤築造などに比較して低コストで整備できますので、他の対策と適切に組み合わせることにより、きめの細かい対応が可能となります。